綱島梁川と驚異の哲学

以前に「悲哀の高調」というエッセイを読んで、「寂寞感からの神の存在証明」的な理屈が面白かったことを書いたのだが、「病輭録」に「驚異と宗教」という小見出しのついた一文があり、タイトルに惹かれて読んでみると、独歩とかなり近い感性で驚異の哲学を…

イエスの言い間違い?

イエスは彼らに言われた 、 「よく聞いておくがよい 。世が改まって 、人の子がその栄光の座につく時には 、わたしに従ってきたあなたがたもまた 、十二の位に座してイスラエルの十二の部族をさばくであろう」マタイ19:28 口語訳 十二使徒が来たるこの世の天…

屋根の上のバイオリン弾き

Lord who made the lion and the lamb, You decreed I should be what I am. Would it spoil some vast eternal plan? If I were a wealthy man. 昔、テレビで放映してるのを一度観たきりだが、こんな歌詞だったと知り、再見したくなった。屋根の上のバイオ…

父から子へ

「イエスはガリラヤのナザレから出てきて 、ヨルダン川で 、ヨハネからバプテスマをお受けになった 。そして 、水の中から上がられるとすぐ 、天が裂けて 、聖霊がはとのように自分に下って来るのを 、ごらんになった 。すると天から声があった 、 「あなた…

証拠としての目撃者

Jesus Before the Gospels: How the Earliest Christians Remembered, Changed, and Invented Their Stories of the Savior (English Edition)作者: Bart D. Ehrman出版社/メーカー: HarperOne発売日: 2016/03/01メディア: Kindle版この商品を含むブログを見…

悪霊どもでさえも

「あなたは 、神はただひとりであると信じているのか 。それは結構である 。悪霊どもでさえ 、信じておののいている 。」(ヤコブの手紙2.19) サタン、アダムは神の存在を知っていたが神に背いた。 我々はそもそも神が存在するかどうか知っていない。 状況…

神の業の尻拭い

認知症の高齢者。人間は神から理性を与えられ、物事の善悪を判断できる道徳的存在にもなり、この世界での役割が与えられるという。認知症老人のこの世での役割は何だろう。神はこの世で役割を終えた人間をいつでも召し上げることができるはずなのにそうせず…

イエスは自分が神だと語ったか?

アーマンによれば答えは否。福音書のテキスト研究から出てきた問題提起として、この問題は一番重要かもしれない。How Jesus Became God: The Exaltation of a Jewish Preacher from Galilee作者: Bart D. Ehrman出版社/メーカー: HarperOne発売日: 2015/04/0…

かたじけなさに涙こぼるる

なにごとの おわしますかは 知らねども かたじけなさに 涙こぼるる伊勢神宮に参拝したときに西行法師が詠んだ句だそうだ。仏教の僧侶が神道の聖域で宗教的感銘を受けるというのも面白いが、かたじけなさに涙がこぼれるという感動の仕方が、人類の罪を一人背…

同性という問題

イエス様は性を超越した神ではなく、人間の男だった。 男が別の男を神と崇め、跪く、というのは、たとえ相手が神の子でも、意外な心理的障壁があるように思う。 この点、女の方が男神に対する心理的抵抗は少ないだろう。 ましてイエス様がアメリカの宗教団体…

機会不均等

ある美人はある不美人よりも異性の愛情を手に入れやすく、結果、異性間の愛情関係で満足し、神の愛を求めるという発想すら持たなかった。この世での愛情を手に入れられなった不美人の方は愛に飢え、他に選択肢がないので、神の愛を求めるしかなく、結果クリ…

顔の問題

現実の肉体を持っていたイエス様には当然、顔があった。 聖書にはイエス様の顔がどんな顔をしていたか、美男だったか醜男だったか、威厳のある感じだったか、神々しかったか、具体的な記述があったかどうも覚えがない。 イエスの伝記映画、例えば「奇跡の丘…

意味のないもの

すべては神の思し召し、神の計画に従っているとしたら、世界には神の計画とは関係のなさそうな事柄に満ち溢れている。例えば人間とほとんど没交渉の深海魚の一生とか。 毎晩のように見る悪夢。(神からの暗示や啓示とはとても思えぬ、偶然的で奇怪な内容) …

信じる者は救われる

信じる者は救われるという時、神への信仰心を持つことで、すでに救われている、信仰心によってこの世の苦難にも耐える力を与えられている、というのは分かる。しかし信じない者は死後の魂が救われないという教えはただの脅しにしか聞こえず反発心しか起こら…

独歩の「神の子」

「国木田独歩 その求道の軌跡」に「神の子」が驚異の哲学シリーズの作品として取り上げられていたので、全集第三巻を図書館で借りて読んだ。 ここでは死という事実の驚異にスポットを当て、そこから無窮の宇宙の中で、今、ここにある我の非常事態性を説く。…

旧約の神と新約の神

Peter, Paul and Mary Magdalene: The Followers of Jesus in History and Legend からの引用。 When, according to the Old Testament, the children of Israel are told to take over the Promised Land,they are instructed to enter Jericho and massacr…

「国木田独歩 その求道の軌跡」を読む

とりあえずカーライルと「覚醒と驚異の願望」の章を読了。 内容紹介に「キリスト教的視点から考察」とあるが、これは単にキリスト教と独歩の思想との関係を考察しただけではなく、日本基督教団正教師でもあられた著者ならではの、神や信仰を求めながらも独歩…

「国木田独歩 その求道の軌跡」を入手

国木田独歩―その求道の軌跡作者: 伊藤久男出版社/メーカー: 近代文芸社発売日: 2001/07/01メディア: 単行本この商品を含むブログを見る独歩とキリスト教との関わりについて一巻丸々考察している本はないか探したものの、特にそういった内容を伺わせる本は見…

独歩とカーライル

独歩はカーライルに思想的な影響を受けたということだが、カーライルについて何も知らないので、とりあえず下記の本を図書館で借りてきた。(代表作「衣服哲学」は図書館で所蔵していない。カーライル、全く人気がないようだ。)カーライル (コンパクト評伝…

独歩「此の我の存在」

全集9巻の遺稿「此の我の存在」も驚異の哲学シリーズの小品。ここでの驚異の対象は「此の我」で、夜中、ふと目が覚めたときに、この世界における自己の存在を強烈に意識するという体験を語っている。眠りから覚めたときにこういう実存的な意識状態に陥るとい…

タルコフスキーの「サクリファイス」

「あなたは神をどうお考えで?」 「何とも ただ怖い」 「別に深い意味はありませんがー あなたはージャーナリストで演劇人で文芸評論家で 美学の研究大会ではパネラーも務めなさり 随筆家です それなのにー暗い顔をしてらっしゃる」 「何です?なぜ“暗い”な…

悲哀・寂寞感からの論証?

図書館で借りてきた明治文学全集の宗教著述家の巻から、綱島梁川(全く未知の書き手だ)の「悲哀の高調」というエッセイを読む。ここで梁川が書いている悲哀感は、独歩の言う、特に理由もなく、黄昏時に感じられるという胸つぶれるような寂寞感とも通じてい…

「国木田独歩とキリスト教」(笠井秋生氏)を読む

http://ci.nii.ac.jp/els/110000967443.pdf?id=ART0001139556&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1466148248&cp=(笠井秋生氏)を読む。独歩とキリスト教の関わりについては既に多くの研究もあるようで、笠井氏のこの論文も参考…

独歩の懐疑

独歩、明治29年頃のエッセイ「文学者ー余の天職」(全集9巻)の草稿から。 神もし許したまわば余は一地方の一伝道師たることを希うなり、 余にして基督を神の独り子なりと心より宣伝し得ば全てのものを投げうって従事せん、天下これより以上の真理なければな…

明治期のキリスト教って

国木田独歩の作品を読んでいて、独歩の時代、つまり明治のキリスト教の受容のされ方に興味が出てきた。 昨今には見かけないような熱意(とシンセリテイ?)でキリスト教について考えられている気がする。 とりあえず下記あたりの本から少しづつ読んでみたい…

独歩の「苦悶の叫」

「苦悶の叫」は独歩の思想が表明されている評論、というか独白文である。 元は「欺かざるの記」の日記の一部から抜き書きされたもののようで、独歩自身断っているようにやや乱文で読みにくいところもあるが、「牛肉と馬鈴薯」「岡本の手帳」「悪魔」三作それ…

独歩の「悪魔」

「明治文学全集66 国木田独歩集」に収録されていた「悪魔」を読んだ。 岡本君は登場しないものの、今作に出てくる浅海謙輔もまた驚異の哲学に取り憑かれた人間で、意外にも(意外ではないのかもしれないが)今回浅海と対立するのは世俗的人間や現実主義では…

独歩の「驚異」

図書館で借りてきた「明治文学全集66 国木田独歩集」の「牛肉と馬鈴薯」の解題(中島健藏)に参考になることが書いてあった。 「牛肉と馬鈴薯」は独歩の人生観を集約したようなものである。その主題は、独歩終生の主旋律のようなもので、「欺かざるの記」な…

岡本の手帳 2

岡本の手帳いわく、 神の人は言ふも畏し、ポーロやルーテルや、皆な「不思議」にめさめてこの幽遠宏大なる宇宙に於ける人の命運につき心をののき感あふれしなり。その火の如き信仰は止むことを得ずして起りし結果なり。 ルターの場合は友人アレキシスの雷死…

独歩の「岡本の手帳」

牛肉と馬鈴薯・酒中日記 (新潮文庫)作者: 国木田独歩出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1970/06/02メディア: 文庫 クリック: 63回この商品を含むブログ (15件) を見る何十年ぶりかで再読。やはり「岡本の手帳」は素晴らしい。パスカル「パンセ」チェスタトン「…