独歩の「驚異」

図書館で借りてきた「明治文学全集66 国木田独歩集」の「牛肉と馬鈴薯」の解題(中島健藏)に参考になることが書いてあった。

牛肉と馬鈴薯」は独歩の人生観を集約したようなものである。その主題は、独歩終生の主旋律のようなもので、「欺かざるの記」などにくりかえして出現する。「驚きたい」ということばは、どうやら西行の「山家集」の中の

世の中を夢とみるみるはかなくも
猶おどろかぬわがこころかな

に関係があったと思われる。詩の「驚異」のはじめの二行は、西行の歌からの借用である。

ゆめと見るみるはかなくも
なほ驚かぬこのこころ
吹けや北風このゆめを
うてやいかづちこのこころ

おののき立ちてあめつちの
くすしき様をそのままに
驚きさめて見む時よ
其の時あれともがくなり

この詩も岡本の手帳に書いてあったとしてもおかしくない。
「欺かざるの記」も読まねば。