独歩の「神の子」

国木田独歩 その求道の軌跡」に「神の子」が驚異の哲学シリーズの作品として取り上げられていたので、全集第三巻を図書館で借りて読んだ。
ここでは死という事実の驚異にスポットを当て、そこから無窮の宇宙の中で、今、ここにある我の非常事態性を説く。ここで議論されていることはいつもの独歩節と言ってもいいのだが、どういう瞬間に今、ここにある我の覚醒が起こるのか、具体的な状況をまとめて挙げている点が貴重。それから後半に登場する翁と少女が何やらヤバい雰囲気をたたえていて、この二人が何を象徴する存在なのかはわからないが、ここでの独歩がキリスト教から離れ、何か異教的な幻想が無意識の混沌から浮上してきたようでちょっと不気味でもある。